○南但消防本部救急業務高度化推進計画
平成25年4月1日
消防本部訓令第42号
1 救急業務の現状と課題
近年、急激な高齢化の進展や医療状況・疾病構造の変化など救急医療を取り巻く環境が大きく変わりつつあるなか、住民の救急医療に対するニーズはますます高まるばかりである。
このような時代の要請をうけ、平成3年「救急救命士法」の制定及び救急隊員の行う応急処置の基準が一部改正され、消防機関の行う救急業務は医療行為の一部を含む高度応急処置が可能となり、救急救命士等有資格者の配置及び資機材の配備等高度救急体制の整備が必要になった。さらには、病院前における医療の質を確保するという観点から、消防機関と医療機関の共同作業による、救急救命士に対する医師の指示・指導・助言体制、救急活動の医学的見地からの事後検証体制、救急救命士の再教育等あり方を協議するため、平成15年3月に但馬地域メディカルコントロール協議会が設立された。
南但消防本部は、合併を機に新たに「救急業務高度化推進計画」を策定し、救急救命士の養成・再教育、高規格救急車等の救急資機材の整備及び市民への応急手当普及啓発要領等の諸施策を推進し救急業務の高度化に鋭意取り組むものである。
2 救急救命士の養成計画
救急救命士の養成については、稼動救急車1台に常時2名体制(1台あたり6名)を確保するため、救急救命士を36名にすべく順次養成する。
平成24年度には36名の救急救命士が養成できるが、平成25~33年度にかけて救急救命士を含む複数の定年退職者が発生することから、新規採用職員の初任教育派遣を優先させる必要があり、この期間中に新たに救急救命士を養成することが困難な状況となっている。
しかし、高度な救急活動を維持するためには36名の救急救命士を確保することが必要であり、有資格者の減少を抑える方策が必要である。
また、救命処置(気管挿管・薬剤投与等)を安全、的確かつスムーズに行うためには、救急隊一隊に2名の挿管・薬剤認定救命士が必要で、今後養成する救急救命士は気管挿管・薬剤投与の資格を取得するものとする。
2名×1.515×2部×6台36名
薬剤認定については、平成20年度以降に養成する救急救命士から救命士養成所入所中に薬剤講習を受け、病院実習又は就業前研修中に薬剤投与病院実習が修了するため、今後養成するすべての救急救命士が取得可能となっている。
挿管認定については、気管挿管病院実習期間が長いこと、実習病院が限定されていること、実習病院の受入体制が維持できるか不確定なことから、平成25年度以降に養成する救急救命士においても養成条件が整い次第、気管挿管の資格を取得するものとする。
救急救命士数が目標とする36名を充足する25年度以降は、救命士を各救急隊に1名乗務させるものとする。ただし、9名の非認定救命士を含むため認定救命士を優先的に乗務させるものとする。
救急救命士養成年次計画
年度 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 | 32 | 33 | 34 |
年度末在職救命士数 | 37 | 37 | 37 | 38 | 38 | 37 | 38 | 38 | 38 | 39 |
救命士資格取得予定数 | 2 | 1 | 2 | 2 | 0 | 2 | 2 | 2 | 1 | 2 |
年度末退職予定救命士 | 1 | 1 | 2 | 1 | 0 | 3 | 1 | 2 | 1 | 1 |
挿管薬剤認定救命士資格取得予定数 | 2 | 2 | 1 | 2 | 1 | 1 | 1 | 2 | 1 | 1 |
年度末挿管薬剤認定救命士数 | 27 | 29 | 30 | 32 | 33 | 33 | 33 | 33 | 34 | 34 |
3 職員の救急活動能力の向上
救急業務の高度化を推進するためには、救急隊員のみならず、消防隊との兼務職員及び通信指令員等、全職員の救急に関する能力の向上が強く求められる。
大災害・集団救急等に共通認識で対応するため、全職員の救急に関する研修会・講習会への積極的参加が必須と考えられる。
また、平成22年度から導入されたドクターヘリ、平成23年度から導入されたドクターカーを有効に活用するため、ランデブーポイント、ドッキングポイントの整備及びドクターヘリ・ドクターカーとの連携救急活動を検証し、ドクターヘリ、ドクターカーを活用した救急活動の効率化を目指す。
4 高規格救急車・救急資器材の整備
(1) 高規格救急車の整備
当市の高齢化・医療情勢の悪化により救急需要の伸びは著しく、救急事案の重複、複数傷病者の発生、集団救急、長時間救急事案等に対応するため、朝来消防署に高規格救急車3台(本署2台、生野出張所1台)、養父消防署に高規格救急車3台(本署2台、大屋出張所1台)を配備する。
また、高規格救急車の車検・点検・修理期間の出動車両の補完及び救急輻輳事案に対応するため、朝来消防署に予備車を1台配備し常時6台の高規格救急車が稼動できるようにする。(7台配車、6台運用)
救急活動の高度化をさらに推進するためには、これらの高規格救急車の計画的な更新が不可欠であり、その更新にあっては更新年数を10年とし、積雪山間地に対応するよう四輪駆動車での整備を図る。
高規格救急車の更新年次計画 (次期更新年度 ○)
年度 車両 | 24年度 | 25年度 | 26年度 | 27年度 | 28年度 | 29年度 | 30年度 | 31年度 | 32年度 | 33年度 | 34年度 |
高規格救急車 (あさご3) 13年度配備 | ○ | ○ | |||||||||
高規格救急車 (あさご6) 16年度配備 | ○ | ||||||||||
高規格救急車 (あさご13) 19年度配備 | ○ | ||||||||||
高規格救急車 (あさご5) 21年度配備 | ○ | ||||||||||
高規格救急車 (養父消20) 15年度配備 | ○ | ||||||||||
高規格救急車 (養父消6) 20年度配備 | ○ | ||||||||||
高規格救急車 (養父消10) 21年度配備 | ○ |
(2) 救急資器材の整備(更新)計画
救急活動に使用する主な資器材は高規格救急車の更新にあわせて、整備・更新することを基本とし、救急車更新時使用可能な資器材については継続使用するものとする。
応急手当普及啓発に係る資機材は、救急資機材更新計画に基づき更新する。
5 救急隊員の教育・訓練
(1) 救急救命士の処置範囲拡大に係る実習派遣
救急救命士法が制定された平成3年当初、救急救命士は半自動式除細動器による除細動、厚生大臣の指定する薬剤を用いた静脈路確保のための輸液、厚生大臣の指定する器具による気道確保等の救急救命処置を医師の指示に基づき実施できることとなった。しかし、平成14年に国(救急救命士の業務のあり方に関する検討会)において、救急救命士の処置範囲の拡大が議論され、平成15年4月からは、メディカルコントロール体制の構築を前提に、包括的指示下での除細動、また、平成16年7月に62単位の気管挿管に係る講習及び30症例の気管挿管実習者に限り気管挿管の実施が可能となった。
さらに平成18年4月には、250単位の薬剤投与に係る講習及び50単位の病院実習を終了した者がアドレナリンの薬剤投与が可能となった。
当本部においては、救急業務の高度化を図るため、各救急隊に最低1名の挿管・薬剤認定救命士が乗務できるよう挿管・薬剤認定救命士を養成する。
(2) 救急救命士の再教育
救急救命士の再教育について、国(救急業務高度化推進委員会報告書)は2年間に128時間以上の病院実習及び160時間の救命士就業前研修を受けることが望ましいとしている。
従って新規養成する救急救命士の就業前研修は、兵庫県災害医療センター及び但馬管内指示病院で160時間実施する。
救急救命士、認定救命士の再教育はポイント制研修を導入し、救急救命士は但馬管内指示病院において2年間で112時間以上の病院実習と16ポイント以上の各種救急研習を行う。
認定救命士は2年間で112時間以上の病院実習を兵庫県災害医療センター又は但馬救命救急センター(64時間以上)及び但馬管内指示病院(48時間以上)で実施しするとともに16ポイント以上の各種救急研修を行う。
また、課長級の救急救命士の再教育は状況により除くことができる。
再教育実施機関 | 実施研修 | 研修時間 |
兵庫県災害医療センター | 短期研修 | 64時間以上 |
但馬救命救急センター | 病院実習 | 64時間以上 |
但馬管内指示病院(和田山・八鹿病院) | 病院実習 | 64又は48時間以上 |
各種救急研修 | ポイント制 | 16ポイント以上 |
(3) 事後検証の充実
但馬地域メディカルコントロール協議会事後検証委員会で行われている救急活動の2次・3次検証結果を、全救急隊員にフィードバックし救急活動能力の向上に努める。また、当本部内で行われている1次検証については、救急技術指導者(MC担当)を選任し救急活動プロトコール遵守の徹底を図る。
(4) 講習会、研修会への積極的参加
救急救命士の処置範囲の拡大が進むなか、より専門的な救急医学に関する知識、技能をより高める必要がある。そのため救急救命士は但馬地域メディカルコントロール協議会が推奨する講習(JPTEC・ICLS・PSLS等)をすべて受講する。
救命士以外の救急隊員は外傷病院前救護ガイドライン(JPTEC)及び脳卒中病院前救護ガイドライン(PSLS)を積極的に受講する。
また、救急救命士及び救急隊員は、但馬地域メディカルコントロール協議会主催の症例検討会、指示医療機関との症例検討会等の研修会に積極的に参加し救急の知識・技術の向上に努める。
6 住民への応急処置技術・知識の普及啓蒙
「応急処置の普及啓発活動の推進に関する実施要綱」(平成5年3月30日、消防救第41号)に基づき、次の事項に着目して普及啓発活動の推進に努める。
(1) 関係機関との連携強化
保健所、医師会、福祉事務所、消防団、教育委員会等関係機関との合同訓練や連絡会等を実施し連携強化を図る。
(2) 応急手当講習会の積極的推
普通救命講習については、養父市、朝来市それぞれの総人口の20%の普及率を目標に実施する。
また、AEDを使用した心肺蘇生法の実施等、近年の応急手当の変化・改正は著しく、普通救命講習の3年毎の再講習は必須と考えられる。
したがって普通救命講習は、年間受講者数(再講習を含め)を両市それぞれ500名を目標に積極的に実施する。
また、応急手当普及員講習(24時間講習)も積極的に実施し、これらの応急手当普及員による地域・組織での普通救命講習等の応急手当講習の実施が望まれる。
消防本部のホームページやケーブルテレビ等でAEDの設置場所の公表を行い、バイスタンダーによるAEDを使用した心肺蘇生が実施できるようAEDの設置普及に努める。
(3) 消防本部の指導体制の充実
現在、当本部では、84名の応急手当指導員が、日本心肺蘇生法協議会の指針に基づき各種講習会に対応している。今後も訓練を通じて応急手当指導員の技術の向上を図るとともに、応急手当普及員講習の受講者による普通救命講習会の実施等、その活用を図り指導体制の充実を目指す。
7 計画の変更
諸般の状況に変化が生じたときは、協議のうえ計画を変更することができる。
8 施行期日
この訓令は、平成25年4月1日から施行する。